講義内容

音楽芸術基礎研究

20世紀以降の音楽は、テクノロジーの進歩に多大な影響を受けている。特に音楽の表現手段や創作の発想に対して、それ以前の時代とは顕著な違いが見られる。本授業では、それらの歴史について学び、変遷と関わり合いについて論じる。これらに関心を寄せて、新しい芸術的な音楽を創造するために、独創的なアイデアを生み出せるようにすることが目的である。最終的には学生が興味をもった分野について、今後のそれらの関わりについてプレゼンテーションを行う。

サウンドメディア基礎演習

音楽を制作していく上で必要な音楽理論として、コード進行を学ぶ。また、楽曲を構成する旋律・ハーモニー・リズム等のあり方をクラシック、ポピュラー、民族音楽など幅広いジャンルの音楽を分析し、研究する。後期では特に、コンピュータで音楽を制作していく技術、主にMIDI制作の基礎を学習し、多彩な音色による音楽表現を学ぶ。生楽器とデジタル音源との比較や、シミュレーションとしてのMIDI制作という概念で楽曲を作り上げていく技術を身につける。

サウンドメディア応用演習Ⅰ

サウンドメディア基礎演習で学んだ内容を基礎に、様々なジャンルのアンサンブルやオーケストラ作品の分析を細かく行い、これらの要素を含んだ楽曲の制作を行う。できるだけ多様なスタイルを身につけるために、楽曲制作としては、創作だけでなく、編曲や既成楽曲のコピーも必要に応じて取り入れていく。その際、楽譜という視覚媒体によって、耳だけの判断では気がつかない、不自然な音楽の流れやフレーズ感を是正することの重要性も合わせて指導していく。

サウンドメディア応用演習Ⅱ

前期では、様々な創作技法、主に20世紀以降の様々な音楽語法である、音列音楽、音群的音楽、偶発性の音楽、ミニマルミュージック、ミュージック・コンクレートなどの手法の研究と理論的な解説を時に映像を交える講義形式で進めるとともに、数多くのフラグメンテーション(断片)の創作を試みる。また、Maxに関する基礎知識を身につけ、基本的なパッチを制作し、具体的な活用事例を参考に、模倣、発想の置き換えなどを試み、音楽作品での生かし方を研究する。さらに、その後、Maxやプロセッシングについて深く学び、生演奏やカメラを活用した使い方を身につけ、同時に立体音響での作品の再生方法も学ぶ。

サウンドメディアプロジェクト

映像と音楽の関連性について、をテーマに、映像が音楽に与える影響を考察し、音楽をビジュアライズする手法を、Processingというプログラミングソフトを用いて、実践的な方法論について解説する。同時に、音楽とインスタレーションをテーマに、音の展示ともいえるこの複合的な芸術作品について、様々な手法を作品例の解説を交えて紹介する。最終的にはインタラクティブなプログラミングソフトを用いて、学内外で企画するプロジェクトでの発表を前提に、実験的な作品の制作を行う。

コンポジション

3年次のⅠでは、作曲の基礎的である形式、実践的な和音の使用法などを学習し、同時に特に古典派時代の音楽からロマン派の音楽の分析を通じて時代的な作曲技法を専門的に学ぶ。その後、印象以後の調性音楽からの無調音楽までの流れや作曲技法の特徴を研究し、小編成のアコースティック室内楽作品の作曲を行う。4年次のⅡでは、エレクトロニクス技術を作品作りにどのように応用していくかについて研究する。その前提として、音楽を構成する『音』についての認識を原点に戻り深め電子音楽と従来の楽器とのアンサンブル作品を作りこれらの形態の音楽の必然性を理解できるようにする。その後、本科目を学んだ集大成として、作品等を創作し公開演奏会で発表する。

音楽制作基礎演習

コードプログレッション、楽曲の構成、アレンジの手法について、実作例での分析や創作によって、これらの知識を修得する。まず、既存の作品に数多く見られる代表的なコード進行のパターンを探し出し、その響きを確かめるとともに、それに自分の旋律を創作しながら、楽曲構成、アレンジについての分析と習作を実施する。コード進行については、テンションノートを理解すると、ジャズや印象派の音楽に見られる特徴的な響きを得ることができるので、幅広い音楽表現が可能になる。また、コードプログレッションと和声学との違いも理解しておく必要がある。またコードのみではなく、ポピュラー音楽に欠かせないリズム(4、8、16ビートやラテン、民族音楽)についても理解し表現の幅を広げられるようにする。

オーケストレーション演習

オーケストラの基本的な形態を学び、使用される様々な楽器の特性、機能、演奏法、組み合わせ方などを、音楽作品のスコア分析や音源の視聴により学ぶ。前期では、各楽器を個別に取り上げ、実作例を通してその特性を把握する。次に弦楽合奏で書かれた部分に注目して、その書き方を研究する。その後、旋律、ハーモニー、伴奏形、対位旋律などの役割を読み取って、ピアノ譜に書き改めるリダクションを行う。後期では、金管楽器について、リダクションを実施して、その組み立て方を学ぶ。さらにこれらの楽器の組み合わせについても同様に学ぶ。実作例として参考にする作曲家は古典派以降、近・現代に及ぶ。このように多様なオーケストレーションを学んだ後、平易なピアノ曲を弦楽合奏や室内アンサンブル、最終的には2管編成のオーケストラに編作する課題に取り組み、研究を深める。

卒業研究(音楽)卒業制作

専門的に学んだ4年間の集大成として、また、社会にはばたく心構えをそなえるべく、知識と客観性を持った音楽芸術の成果を示すよう各専門での課題に取り組む。「音楽制作」・「録音作品制作」・「音響空間作品制作」の3つの中から部門を選択し作品を制作する。音楽のジャンルは限定しないが、「音楽的、あるいは芸術的にすぐれた作品」をテーマに現代的な表現手法を用いながら創作をおこなう。本コースでの最後の1年間という期間を充実させ、芸術の本質を見極め、質の高い作品を完成させ、社会に貢献できるアーティストとしての研究の土台を作る。学年末の提出後にはプレゼンテーションの機会を設け本授業の完成とする。

録音デザイン研究

録音デザイン研究1では、音楽録音に必要な基礎的な録音技術を理解し、実際に録音を行う。同時にさまざまな録音作品を分析し、音楽的あるいは芸術的にすぐれたサウンドとはどのようなものかを考察することが授業の到達目標である。具体的には、音楽を録音するということがどのようなことかを理解しながら、そのために必要となる基礎的な技術を身につける。具体的には録音の基礎やスタジオの仕組みについて学び、音楽録音を経験しながら、ステレオ録音・再生の仕組みを学び知識を深めていく。録音デザイン研究2では、これまでに学んだ知識をもとに、さらに深く音楽録音の手法を研究することが目標である。具体的には、ギター、ベース、ドラムなどのバンドのアンサンブルの収録を経験しながら、マイクの種類や特性、ふさわしいマイク配置を理解し、最終的に音をデザインしていく方法を研究していく。

音響デザイン研究

音をマイクで収音し、電気信号に変えて、それをスピーカーから音として出力し、多くの観客に音を届けるという、「舞台音響」の基礎知識を理解し、音響機材の基本的な操作テクニックを身につける。また、電気音響を使用して音楽を観衆に伝えることがどのようなことかについて、現在エンターテインメント業界でのPA(パブリック・アドレス)とSR(サウンド・リンフォースメント)がどのようなものかについて考えていく。同時に現代に行われているさまざまなスタイルのコンサートごとの音響を分析しながら、音響の基本的なテクニックとオペレーションを身につけながら、現場でのマナーも習得し、コンサート音響や舞台全般について研究していく。また、音響の国家資格である舞台機構調整技能士3級取得に必要な知識も習得していく。

録音デザイン実習Ⅰ

これまで学んだ、音楽録音に必要な基礎的な録音技術を応用しながら、実際にさまざまな録音を行う。録音デザイン実習Ⅰ-1では、Piano、Vocal、Gtr、Bass、Drumなどの各楽器のマイクアレンジを研究しながら録音を行うことができるように知識を深める。録音デザイン実習Ⅰでは、スタジオレコーディングの基礎について再確認し、音楽録音と制作における技術的なアプローチとそのフローを研究する。その後、リズム収録とダビングを実践し、履修者自らで編集とミキシングを行い発表する。録音デザイン実習Ⅰ-2では、これまでに学んだ音楽録音に必要な基礎的な録音技術を応用しながら実際に作品制作を行う。前半は、より音楽的な作品を制作することができるように、録音技術の基礎を振り返る。具体的には、アナログコンソールでのミックスを行い、DAWでのミックスでの共通性と違いを見出す。またDAWならではのエディットとミックスについても知識を深める。後半は、2年間の録音の学びの成果を実践するために録音作品制作に取り組み発表する。

音響デザイン実習Ⅰ

音の基礎からSR機器の基本動作の確認および操作、応用を学びさらにはミキシングに至り音楽の楽しさと感動的な音響空間をデザインすることを研究する。授業ではまず、音の伝達と音響機材の基礎を学び、操作、音作り、SRシステムデザインのプランニングを行うことができるように学ぶ。具体的には、パッシブスピーカとパワードスピーカの接続と使用方法について学び、その後、音声信号レベルの種類やバランス回路やアンバランス回路の違いについて研究する。その後、機材の接続の確認、ミキシングコンソールの入力レベルの調整、プレイバック機器の取り扱いと、フェーダー操作について学ぶ。その後、仕込み図の読み方、書き方についても研究し、最終的には、チームでの仕込み作業とコミュニケーションについても経験を通じで学んでいく。

録音デザイン実習Ⅱ

音楽を録音し様々な人に伝えるということがどのようなことかについて理解し、技術的な側面のみではなく、どのような音が人の心に響くかについて考察しながら芸術的なサウンドデザインについてを研究する。録音分野では、これまでの音楽作品を分析しながら、基礎的な技術である、マイクの種類や特性、ステレオマイク配置について学びながら実際の録音をおこなっていく。音響分野では電気音響を使用して音楽を観衆に伝えることについて、まず、アコースティック楽器がホールで演奏を行うという音の伝わり方を理解しながら、マイクやスピーカーの原理や仕組みについて理解しミキサーの構造や役割について学ぶ。最終的に各音楽ジャンルごとに必要となる音響技術について知識を深める。現在行われているPA(パブリックアドレス)とSR(サウンド・リンフォースメント)がどのようなものかについて考えていく。

音響デザイン実習Ⅱ

音の基礎から音響機器の基本動作の確認および操作、応用を学び、さらには音楽の楽しさを伝え、より感動的な音響空間をデザインできるように学ぶ。具体的に、音響デザイン実習Ⅰ-1では、音の伝達と音響機材の基礎を再確認し、SRシステムデザインのプランニングとともに操作、音作りについて学ぶ。また、スピーカーチューニングと出力調整、サウンドチェック、フェーダー操作とイコライザーを使用した音作りについても学ぶ。音響デザイン実習Ⅰ-2では、バンドアンサンブルを想定したプランニングを行い実際に本番を経験する。具体的には、メインスピーカーの配置やモニターの配置とともに、ネットワークオーディオの基礎についても学ぶ。その後、各楽器のマイキングを計画し実践。最終的にはその空間と合わせた音楽的な音響デザインを行うことができるように研究する。

録音デザイン実習Ⅲ

今までに学んだ録音技術を応用し、実際に録音作品の制作を行う。同時にさまざまな録音作品を分析し、音楽的あるいは芸術的にすぐれたサウンドとはどのようなものかを考察することが授業の到達目標である。また、ステレオ作品のみでなく、マルチチャンネルの作品制作についても深く学び作品制作に挑戦する。授業では、アコースティック楽器を中心としたクラシック、Jazzの録音制作とVocalを中心としたポップ、ロックの録音制作の双方を行う。アコースティック楽器の録音では、各ジャンルで求められる録音に対する考え方や美学とともに、現在のトレンドと求められる表現について録音実習を行いながら学ぶ。また、Vocal楽曲の録音では、アレンジや楽器構成を理解しながら、どのように引き立てていくかについて、技術的な手法のみではなく、収録時のディレクションについても研究していく。

音響デザイン実習Ⅲ

これまでに学んだコンサート音響技術と音楽表現についての知識と経験を生かし、自ら音響コラージュ、電子音楽、音響インスタレーションなどの音響作品を制作する。また、舞台芸術としての音響演出を理解し、プラン、仕込み、操作ができるように学ぶ。技術的には、国家資格である、「舞台機構調整技能士2級」をモデルとしたプランニングとミキシング技術を習得する。また、音響表現的には、現代の音楽制作が、作曲とともに音響的な表現がクロスオーバーしていることを理解し、これまでに学んだそれらのスキルを生かしながら「音響作品」を自ら制作していき、卒業後もそれぞれの個性を生かし伸ばしながら息の長い音響表現者としてのありようについて考え察していく。

デジタルアート

1990年以降の急速なテクノロジーの発達により、音楽と映像が一体となって表現をおこなうことはもはや当たり前となった。今後もこれまで以上に影響し合いながら、お互いの可能性を押し広げていく中、この授業では基本的な映像制作の流れを理解しながら、実際に音と映像が融合したコンテンツの制作をおこなう。映像制作の基礎を踏まえた上で、さまざまな映像表現、特殊効果などについて学ぶ。音楽制作者の立場ではあるが映像制作について学び、これらが結び付くと鑑賞者がどのような感覚を生むのかをテーマに、自らの糧となるように取り組んでいく。

副科実技A・B・C・D

本コースではコンピューターや音響機器をツールとした音楽作品の創作に取り組んでいるが、楽器の演奏技術を身につけそれを高めることは、音楽を深く理解するためにもっとも必要なことである。副科実技は、AからDまであり、1年から4年まで楽器演奏を学ぶことが可能である。まず、Aでは、基礎を身につけるための技術を学んでいく、その後、B以降では、次第に高度なテクニックを身に付けていく。レッスンは学生個人の進度にあわせて行い、学生それぞれが持ち合わせた演奏技術の向上を目指すことを目標とする。また、音楽表現力を高めるために、場合によっては、アンサンブルによるレッスンも取り入れながら演奏する楽しさを体感し、最終的には豊かな音楽表現力を身につけることを目標とする。